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短編 刑事・ミステリー小説

ちょっとしたミステリーや人間の心理を観察することが好きな方は是非一度ご覧を

「贖罪の過去」 終章 被害者と加害者を結ぶ奇妙な接点?

「贖罪の過去」

終章

「そうですか、それで主人は…」

 翔一と桜子は絵李菜の住居に訪れていた。岩城が離婚を申し出た動機を伝えるためである。

「御主人は自分のミスで香苗さんの遺族からあなたにも怒りの矛先が向けられる事を恐れていました。そのためあなたに被害が及ばないよう、別れることを決意せざるを得なかったんです」

 絵李菜は夫の真意を知ると、窓の前に立ち外を見据えていた。

「水臭い人…。どうして私に何も教えてくれなかったのよ…」

 翔一と桜子は絵李菜に伝えるべき事を伝えるとすぐに別れを告げた。帰り際に桜子が独り言のようにまたもか細い声で翔一に問いかける。

「香苗さんに容疑が向けられた事件に目を付けた理由は父親の名前にあったのね…」

「ええ、香苗さんのプロファイリングに書かれていた親族の中に管理人さんの名前、『大木聡史』とありましたから。しかし、気になったのは奥さんから聞いたところによると結婚当時は彼は自分の姓を捨て、『和泉』を名乗っていたそうなんです」

 桜子が瞬時に反応する。

「岩城君と同じ婿養子だったってこと?」

「もしかしたらそれが最大の理由だったのかもしれませんね」

 部下の不可解な発言に桜子は首を傾げる。

「管理人さんも昔に岩城さんと同じような境遇であったのかもしれません。岩城さんは彼と何処か通ずるところがあったのかもしれない、そのため自分に殺意を抱いている事もいち早く感知出来たのかも…しれませんね」

 全く根拠のない言い分だと思っていたが、その時の桜子はわずかに影を落とした表情の部下を見て、頭から否定することは出来なかったのである。

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